マスコミや政治家が好んで使う「安全資産として買われる日本円」は嘘っぱち!
公開日:
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最終更新日:2021/02/10
資産運用の基礎、Q&A、基礎用語
こんにちは、K2 Investment 投資アドバイザーの眞原です。
今、マーケット全体を賑わせているの要因が大きく2つあります。1つはギリシャ債務問題、もう1つが下げ止まらない中国株式の推移です。ギリシャ債務問題の大詰めは次の日曜日、そして来る20日(ECBへの返済日)が山場でしょう。
※ギリシャ国民投票の答えは「OXI=NO」で61%(暫定)!ユーロ圏離脱は待ったなしか?/財政問題
そして、中国については中国政府が手をかえ品を変えあらゆる手段で株価下支えの規制緩和策やマーケットインパクトを与える情報を発している状況です。
※中国A株を売却すると逮捕!?共産党のなりふり構わない株価下支え政策!中国マーケットの異変に備えよう/マーケット(世界)
そんな中で、為替推移でUSD/JPYが121円台とやや円高方向にブレている(円が買われている)状況です。
マスコミが大好きなフレーズの「安全資産としての円」は嘘っぱち
このような金融市場が混乱の中で株式が下落して円高になる(=リスクオフの環境になる)と、マスコミや政治家が好んで使いたがるキーワードがあります、それは「安全資産としての円が買われる」というフレーズです。
これは本日7/8の前場のマーケットを受けて午後にアップされている「時事通信社」の記事です。最終的には今日の日経平均は2万円台を割って引けていますが、今日は、株式の話ではなく為替について。
敢て記事内を赤線でわかりやすくしていますが、
「リスク回避姿勢が広がり、《安全資産とされる円を買う動きが強まった》」(外為仲介業者)
とありますね。
同じく去る7/6(月)のギリシャ国民投票が終わってからのマーケットについて、
「ギリシャ国民投票の結果を受けユーロを売って《安全資産とされる円を買う動きがう優勢となり・・・》」
「安全資産とされる」!?
私はこの飾り言葉を見ると、
「はぁ〜〜〜!?本気で言ってんの???」
と、いつも思うわけです。
このような飾り言葉を見て、色々思いを巡らせて考えついたのは、
1.)記事を書いている記者自身が金融について無知
2.)どこかのお偉いさんや新聞社として「安全資産として」という飾り言葉を付けるように言われている
3.)本当に、安全資産=日本円
の3つです。
結論、「安全資産という飾り言葉」は嘘っぱちです。
誰が好んで今後の成長戦略が見えないゼロ金利下で量的緩和を継続している日本円を買いたいと思うのか?
金融や資産運用でいう本来の安全資産とは「リスクが限りなくゼロに近い資産」を指します。例えば、国債(主に米国債)、永世中立国で抜群の金融サービスを持つスイスのスイスフランですね。
ここに「日本円」が入るのか?と言われれば下記の項目の理由で「ノー」でしょう。
・世界最悪水準の公的債務(赤字国債)=1,053兆円、対GDP比233.8%の日本円
・経済低成長
・先進国先駆けの少子高齢社会、人口減少国
・集団的自衛権によって、戦争に巻き込まれる可能性が以前より高くなっていく日本円
・地震発生リスク高まり、原発問題未解決国
通貨が買われるのは「今後の成長余力」「高金利」「経常黒字」の国の通貨がメインです。日本ではまだ唯一残されているのが「経常黒字」という側面。ただ、これ単体の理由で日本の円が「安全資産」として買われて円高になっている訳ではありません。
決して「安全資産だから」ではなく、単純にレバレッジがかかった円キャリー取引の逆回転の現象の結果である
先に答えを言ってしまうと、上で確認した新聞記事の「安全資産としての」という飾り言葉は嘘っぱちで「円キャリー取引の逆回転」が生じているだけに過ぎない円高ということです。
冒頭で述べた2つの大きなリスク要因を下に、現在の金融市場(グローバルマーケット)は混乱気味です。そこで世界中のマーケット関係者が考えるのは低金利でコストが安く済む「日本円で借金をして取引をしよう」ということです。専門的に言うと「(円)キャリートレード」と言います。
日銀が積極的に金融緩和策をしている結果、安価に借金ができる上、国際的に一応流動性が高い日本円なので、今までの世界的な株高や原油や商品相場(コモディティ)高時などのリスクオンの環境下では大人気の通貨でレバレッジも沢山かかっています。
「円キャリートレード」の雑観がこちら↓
『低金利の日本で円を調達→オフショアファンド(ヘッジファンド)や海外投資家がその調達した日本円をUSDなどの外貨へ交換→そのUSDなどの外貨を用いて海外の株式やコモディティへ投資→リターンを上げる』
調達した日本円を売ってUSDなどの外貨を買うトレードが行われるので「円安ドル高(外貨高)」の要因になるのです。今の日本の経済環境は「借入資金の金利(ゼロ金利 )< 運用益の利回り」なので、乱暴に言えば、タダで日本円を借りて投資先で少しでもリターンが上がればかなりの儲けになる、ということですね。
そして、本題に戻ると今のギリシャ債務問題と中国株式市場の下落を受けてリスクオフ(株式や原油コモディティは売って債券などに投資したい)という流れになるので、円キャリー取引が「逆回転」し始めるのです。
「円キャリートレードの逆回転」の雑観がこちら↓
『ギリシャ問題で欧州株式や米国株が下落→オフショアファンド(ヘッジファンド)が損失防止の為に保有株式の売却に動く→現金化されたUSDなどの外貨を売って、日本の円を改めて買い戻し、借りていた日本円の資金返済に充てる』
よって「円高ドル安(外貨安)」の要因+株安になるということになります。
直近の「ユーロ高(対ドル)」に関しも同様の話で、量的緩和で低金利のEURもキャリー取引に用いられるのでギリシャ問題で混乱している中でもユーロ買いドル売りのトレードが起こっていました。日本の場合で言うと、2011年の東日本大震災の先に「なぜか円高」になったと記憶しているブログ読者もいると思いますが、同じように円キャリーのレバレッジ解消の逆回転が生じた分かりやすい例です。
今後もマスコミや政治家が言う「安全資産」の円を信じて、円資産(円預貯金)100%で保有しているリスク
現在、日本人の個人金融資産1,600兆円程度の90%以上は「日本円」を資産として保有されています。
資産区別で具体的に見ると、預貯金、株式、債券、保険、不動産(土地)などです。今後はマイナンバー導入によって、しっかりくっきりと「お上」が国民ひとりひとりの資産把握に努める訳ですが、今一度「日本円資産」のみに片寄っているイビツな全資産ポートフォリオを見直す必要は大いにあります。
なにせ
「安全資産としての」日本円
は、嘘っぱちなのですから。
※ギリシャでは預金者の銀行預金EUR8,000(約110万円)以上あるうちの30%を強制没収を計画中。連鎖倒産の防止へ(預金税?)1946年の日本での預金封鎖+預金税(強制徴収)と同様か?/財政問題
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