「永久債」や「50年債」とは?(くすぶり続ける日銀ヘリマネ出動と高齢化社会日本の国債問題)
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最終更新日:2021/02/09
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こんにちは、K2 Investment 投資アドバイザーの眞原です。
今日は日銀金融政策決定会合がありましたね。
結果はETFの買い入れ枠拡大(約3.3兆円→約6兆円)と「質」への緩和策だけに留めたことでマーケットは失望というところでした(「量」を増やすと「ヘリマネ論」と取られかねない)。
さて今回の日銀金融政策決定会合では「永久債」や「50年債」(+広義のヘリマネ)についての話題は上がっていないようですが、一方の海外マーケットでは俄然「ヘリマネ論」に盛り上がりを見せている現状です。
また、日本の「国債」については様々議論の余地がある中で、先週や今週には「永久債」や「50年債」発行か?との議論も盛り上がっていました。
「永久債」とは?
「永久債」とは、償還期限の定めがない債券のことで、永久に利子が支払われること、また投資家は償還を要求できないもののの、債券発行体は一定期間後の償還オプションを保有しているというのが特徴です。つまり、償還は発行者側に委ねられる債券。
が、しかし日本政府(日本の財政上)は「この永久債を発行するという選択ができない」というのが本音です。
なぜなら現時点でも膨大な債務を抱える日本政府が「脱デフレ(2%インフレ目標)と言っているにも関わらず、仮にこの永久債を発行するとなれば、財政再建に取り組み姿勢の後退と見なされるリスクが高くなる」からです。
ちなみにゼロ金利の「永久債」を一言で表すと「紙くず(保有しているメリット無し)」です。
「永久債」は返済期限が無いという意味では「株式」と同じですが、ただ株式と違う点は「未来永劫に渡り無配なのが確定」しているので、結局は「紙くず(保有しているメリット無し)」だという意味になります(※「株式」には配当や値上がり(=株主還元の将来キャッシュフローの総和)がある)。
そんな中、日銀OBが現在保有中の日本国債(量的緩和で引き受けている国債)を「紙くず(変動金利型・繰り上げ償還条項付き永久債)」に変えれば良いというような意見を出しています。
たしかに日銀が「紙くず」を保有することで金利支払いも元本償還も無いので、国自体は「債務不履行」は発生しないものの、結局日銀の資本が毀損するので日銀破綻(「日本円の信用失墜」)に繋がるのでは・・・と危惧します。
※ヘリコプターマネー(ヘリマネ)発動は日銀破綻へのトリガーに?(2018年〜2030年の日本国債クラッシュ懸念=円資産価値の減価)/制度・規制・法律・金融政策
50年債とは?
その名の通り「50年満期の国債」ですが、既にフランスやオランダ、スイスなどでも発行されている超長期債券です。
この50年債の話題がなぜ盛り上がっているのか?ですが、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)が報じたことがキッカケです。
<「50年債」について報じるWSJ(7/27付)>
このWSJ記事対して、財務省側(国側)では明確に否定するコメントが矢継ぎ早に出されています。もしこの債券を日銀が引き受けることになるとそれこそ「ヘリマネ」なので、否定せざるを得ないのが現状でしょう。
そもそも「50年先」に日本国が今のままの姿で存在していると考えるかどうか・・・。
今はまだ良いけれど・・・1,400兆円の日本国債発行裏付け資産を保有する高齢者の高齢社会の問題
さて、日銀が2013年から行っている「量的質的緩和策」によって、ほとんどの年限の債券「金利」が消えてしまっています。
<日本国債・年限毎の金利推移>
(出典:WSJ)
通常の状況であれば期間が長い債券(20年債、30年債、50年債)は、未来への不確実性が高いので、これまでの経済学上では、金利は高くなるものです(5年債や10年債などとの相対比較において)。
しかしながら、今はほとんどの債券がマイナス圏に沈んでいる推移していて、もはや通常の状況ではない債券マーケット(金利マーケット)なのです。
<日銀が国債の買い入れ維持が可能なのか?>
(出典:Bloomberg)
もっとも「日本国債」は日銀が国債発行のうちの1/3を引き受けている状況で(買っている状況で)、このままの引受買付ペースを継続すると2018年頃には50%超が日銀保有(≒政府引受)になってきます。これこそまさに「ヘリマネ」と言っても過言ではないと思いますが・・・。
そもそも「日本国債発行の裏付け資産」は、特に高齢者世代が保有している1,400兆円余りある日本国民の潤沢な資産に依存しています。つまり日本人は国内で日本国債を消費しているから「信任」を得られ、だから「日本円が買われる」というロジックです。
しかしながら、まず日本の少子高齢社会が止まらない中で、2020年には特に団塊の世代が70歳を超えてくる、つまり「年金+α預貯金の取り崩し」が雪崩のように発生します。
日本の経済発展が低成長である以上、成長に追いつかずその裏付け資産(1,400兆円)の減少がジワリジワリと起こり「信任」そのものに疑問符が生じてきます。
<平成27年一般会計予算・社会保障関連予算の内訳>
(出典:厚生労働委員会調査室)
また日本政府の財布(一般財源)の内、現時点で32%を超える費用が「社会保障関連費(年金、医療、介護、生活保護、社会福祉)」に使われているので、この割合が更に大きくなることも目に見えています。
結果、政府が選択せざるを得ないのは「増税」もしくは「社会保障のカット」になります(「赤字国債発行」も1つの手ですが・・・)。
後者の「社会保障のカット」は中々厳しいでしょうし、まずは「増税路線」にかじを切る、そして「1億総活躍」という名のもとに「高齢者の定義」を変更して「年金支給額の繰り上げ(70歳や75歳)」にして、結果特に40代以下の若い世代の「社会保障」を削減していくというシナリオが容易に想像できます。
※2015年は過去最高、日本人口の4人に1人が65歳以上の高齢化社会時代に本格突入(若い世代の年金を支えるのは?)/みんなの年金問題
ジワリジワリと「待った無しの状況(解決策が見えない)」になりつつあるというのが、今の「日銀」と「日本国債の状況」そして「若い世代の明るい未来」というのはなんとなく想定できます。
〜併せて読みたい〜
※どうやら消費増税(8%→10%)決定は再延期??(日本の財政問題と高齢者やこれからの若者の年金はいかに!?)/投資と社会事情の関係
日銀保有の日本国債のデット・エクイティ・スワップ?
ちなみに・・・少し専門的になるので個人投資家は読み進めなくとも良いと思いますが、産経新聞が面白い報道をしているように感じました(少し私の穿った見方ですが(苦笑))
<ヘリコプターマネー検討、安倍首相周辺で浮上 日銀資金で財政出動 「今がチャンスだ」と高官ら進言>
(出典:産経新聞(7/13付))
特に注目して面白いと感じたのが、三段落目の「まず、政府と日銀は協定を結ぶ。日銀は市場で買い取った国債を再売却せず、半永久的に保有する」という箇所です。
この箇所はここまでで見てきたように「ヘリマネ論」についてですが、より注目すべきなのが「協定を結ぶ」という点です。
実は金融の世界には「デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap:DES)」という、財務改善の手法の1つがあります。
これは通常企業が「負債」と「資本」の交換が出来る取引で、具体的には今にもデフォルト(破綻)しそうな企業(債務者)に対して債権者が用いる方法で、債務者の貸金や債券(debt)を株式(Equity)に交換することで、債務者は貸金や債券の返済期間から逃れることができるようになります。
もしもこの「協定内容」が仮に日銀が保有する国債のデット・エクイティ・スワップ化を盛り込む内容とするならば、日本国債(Debt)が株式(Equity)になるという話に落ち着きます・・・直近だと一時、ギリシャが破綻しそうになった際に話題に挙がった手法です・・・、実施するには沢山の壁があるものの、財政難の国には持って来いの方法です。
少し仮想の話しにズレましたが、結局いずれにせよ・・・結果的に損を被るのは「(銀行やゆうちょを信じて「日本円だけで」銀行預貯金をし続けている)日本国民の1,400兆円余りの資産」なのですが・・・、備える上では通貨分散はしておきましょう。
※ギリシャ債務問題は根本的に未解決で単にギリシャ国民の生活が苦しくなるだけ。日本人個人投資家は資産防衛としてギリシャ問題を反面教師に捉え始めている。/財政問題
(カバー写真:日経新聞電子版)
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