米国「政府機関閉鎖+債務上限引き上げ失敗」と「メキシコ国境に壁を作るか」のチキンレース?
公開日:
:
最終更新日:2021/02/09
気になるホットニュース(妄想・制度・規制)
こんにちは、眞原です。
明日から9月ですが、どうやら9月のグローバルマーケットは「荒れそう」な予感がしています・・・。上下のブレがあるというのはオフショアファンド(ヘッジファンド)にとってはリターンを上げやすくなるので良い環境ではありますが、投資家心理としては短期的に堪えるかも知れません。
9月に入ると、まず北朝鮮問題は9/9(北朝鮮独立記念日)がターニングポイントでしょうし、
そして、それ以上にマーケットや投資家が目下注目し続けているのが、今回の
米国(トランプ政権)の「政府機関閉鎖+債務上限引き上げ失敗懸念」
です。
(出典:REUTERS)
結論から言うと、
米国のデフォルト懸念に振り回されるマーケット(毎度の米国内の政争の具)
ということ。
ことの発端は先週、米国トランプ大統領が、
「メキシコと国境の壁建設の財源確保のためなら連邦政府機関閉鎖も辞さない」
という考えを示したことで9月中に通過しないと困ることになるであろう重要法案(「歳出予算法案」と「債務上限引き上げ法案」)の2つが議会を通過出来ないのでは??と意識されるようになったのです。
米国の政府機関が閉鎖??
そもそもの大前提として、議会は会計年度が終了する9月末まてに連邦政府の活動予算を手当するための新年度の歳出法案を成立させないといけません。
これに合意が得られない場合には、「つなぎ予算」を承認しながら、本予算の協議をしていく必要があります。
それでもつなぎ予算と本予算でどちらも折り合いが付かなければ「政府機関が閉鎖」されます。
記憶に新しいと思いますが、4年前のオバマ前政権時代の2013年10月に、医療保険制度改革法(オバマケア)に対する支出を巡った与野党対立が原因で政府機関閉鎖が起こったのは皆さんの記憶に新しいと思います。
債務上限の引き上げ?
また一方で「債務上限」というのは、連邦政府が財務省証券(米国債)を発行し、借り入れられる金額を法的に決めているものです(現行で19兆8,000億ドル)。この実際の借入額が上限に達する場合には議会が上限を引き上げる必要があるものの、これができない場合には、米国政府はデフォルト(債務不履行)に陥ります。
つまり、この債務上限問題は「米国債保有国/保有者」さらにはほとんどの債権券の投資信託(ミューチャル・ファンド)も大きく影響を受けるのは間違いありません。
過去数年で最も印象に残っている債務上限引き上げ協議が決裂寸前までもつれたのは2011年です。
米国格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国のソブリン格付け(長期発行体格付け)を「AAAからAA+」に史上初めて引き下げた結果、当時の米国株の時価総額が2兆4,000億ドルあまり吹き飛ぶ結果をもたらし、それが波及して日本(日経平均株価が一時9,000円を割り込む水準に)、中国(上海総合指数)、香港(ハンセン指数)、韓国など主要アジア株式市場も軒並み下げる影響となりました(俗に言う「米国債ショック」)。
また為替でも7月中旬当時に為替が1ドル=79円台だった状況から1ドル=76円台までの円高が進む「大荒れ」マーケットとなったのが記憶に残っている投資家も多いのではないでしょうか?
今回、米財務省は9/29までに議会が債務上限を引き上げることを要望していますが、もしこの日を越えた場合でも財務省には緊急時の予備財源があるので、仮に米国デフォルトが起きるとして、早くとも10月半ばに以降になってきます。
トランプ大統領(政権)のことなので、マーケットは荒れること必至!
本来、別々の審議になる2つの法案(議題)とのことですが、今回は共和党の債務上限引き上げ反対派が歳出予算の削減を要求しようとしているので、審議はセットで取り上げられる公算が大きくなっています。
下院(壁建設の初期費用16億ドルを含む歳出法案を通過)では「歳出予算法」と「債務上限引き上げ法案」について単純な過半数で可決ができるものの、上院では60人の賛成が必要なので、52議席しかない共和党は民主党の一部の支持を得る必要がでてきます(政争の具)。
だからこそ、そこで「メキシコ国境の壁建設」についての議論が出てくるのですが、下院(共和党保守派)は壁建設を訴えるトランプ大統領に共鳴して、関連予算をどの歳出法案でも優先すべきと主張。そして、一部では予算獲得のためであれば進んで政府機関を閉鎖するとの声も上がっている状況です。
一方の共和党穏健派は、政府機関閉鎖を好ましくないと考え、党指導部も政府機関閉鎖回避を決意している状況。
さらに問題を複雑化しているのは、先週のハリケーンHarveyによる被害者支援のための資金確保(=予算)です。
各党、各政治家が「政治(金と名声と支持)」を巡る攻防を繰り広げる結果、米国債券市場、株式市場、コモディティ市場、あらゆるマーケットがグラグラと揺れる9月になってくるのかなと想定しています。
なので、個人投資家の皆さんは、慌てず落ち着いて進捗を見守るほうが良いでしょう・・・。
「米国債がデフォルトする」
というのは、まずあり得ないと考えましょう、、、というのももし仮に米国債が完全にデフォルトした場合、世界の経済システムそのものが「終わる」からです。
あくまでも政争の具として利用され、それにマーケットや投資家心理が翻弄されるということに過ぎません。
ちなみに、議会が数カ月間の暫定予算を可決すれば政府閉鎖は当面回避できる上、トランプ大統領が壁建設費用(約220億ドルで完成には3年以上を要する)を除いた暫定予算案を承認すれば、予算の期限とみられる12月までは対立を先送りすることができるようです・・・。
さぁ、トランプ大統領がどう(政治的な)判断をするか・・・。
オフショア投資入門書(マニュアル)を
無料進呈します
オフショア投資とは:日本には入ってこない海外の金融商品に直接投資をすることをいいます。それらのファンドが主に税金のかからない国(オフショア)に登記されているのでオフショア投資と呼ばれています。
関連記事
-
【制度】海外送金の制限が拡大!マネロン対策という大義名分の「個人自由の侵害」へ〜 オフショア投資のタイムリミット〜
こんにちは、眞原です。 特に先月から急激に「個人による「投資目的」での海外送金」が厳しくなって
-
【積立投資】断固反対!銀行窓口でのイデコ(iDeCo)参入!
こんにちは、眞原です。 今回は「積立投資」と「制度(iDeCo/イデコ)」、「年金制度」につい
-
【投資信託(ミューチャル・ファンド)】金融庁、投信販売で「3つの共通指標」導入へ(社会主義国的な日本の金融事情)
こんにちは、眞原です。 今回は、日本の投資信託(ミューチャル・ファンド)で資産運用をしている個
-
「国難突破解散」と日本の財政と金融市場のお話(日本ソブリン債CDS急上昇)
こんにちは、眞原です。 今回は「日本の財政事情と金融市場」について。 先に日本の政治につ
-
【為替】ヘッジファンドは先行き円安観測!個人投資家は「円以外の通貨分散(外貨保有)でリスクヘッジ」を。
こんにちは、眞原です。 今回は、為替動向について。 どうやら、明日の日銀の金融政策決定会
-
2020年米国大統領選挙トランプバイデン泥沼劇場で必ず言える「結末」と、個人投資家の「安全資産」は何か?
こんにちは、真原です。 2020年米国大統領選挙(共和党トランプ現大統領vs.民主党バイデン候
-
民主党クリントン氏 VS. 共和党トランプ氏の第1回TV討論会開催!個人投資家は要注目!
こんにちは、K2 Investment 投資アドバイザーの眞原です。 今回は11/8の米国大統
-
日本の株高は政府と日銀の虚像。その真の狙いは?
こんにちは、K2 Investment 投資アドバイザーの眞原です。 今回の記事は「日本の株高と
-
【未来予測】NRI未来年表2018〜2100(未来に対して不変的なことと備えられること)【2019年/2020年編】
こんにちは、眞原です。 今回も前回に引き続きNRIが発表している『NRI未来年表 2018-2
-
知らぬうちに2018年夏に開戦モードへ!?有事の際の資産保全方法と身を護る方法は?
こんにちは、眞原です。 今回は気になるニュースから・・・。 2017年11月29日朝から