1ドル=125〜130円は真空地帯。6/10、虚を突いた黒田日銀総裁発言で円高ドル安へ。今後の為替推移は?
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最終更新日:2021/02/10
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日銀総裁と大臣発言
<USD/JPY 為替レート 日足チャート>チャートで言うと、ちょうどガクんと下方向(円高方向)に下落している箇所です。レートで言うと1ドル=124円60銭程度から123円程度まで一気にブレました。
まさに「虚を突く」口先介入。意図的にやったとは言わないまでも、日銀総裁の為替についての発言がマーケットに必ず影響があると分かった上で発言しているハズなので、これ以上の円安を阻止したいとの思惑がよほど強かったのではないでしょうか。また一方、6/10の夕方には甘利経済財政・再生相も黒田総裁との為替に触れる話をした結果、1ドル=122円台後半だったレートが切り返し123円台前半まで円安ドル高にブレました。
黒田日銀総裁の狙いとは?
黒田総裁発言の背景にあるのは、1ドル=125〜130円はいわゆる「真空地帯」と呼ばれる累積売買代金が薄く上下のブレ幅が大きくなるレンジだからです。つまり、1ドル=125円を突破していけば軽く130円台まで到達する可能性が高いことを意味しています。黒田日銀総裁はこれを阻止したかった、という風にして捉えられています。
現在、米国の雇用統計やその他指標を反映し「米国の利上げ時期はいつか?」というムードが高まっています。マーケット関係者の中では9月もしくは10月説が濃厚です。これを織り込む形で為替が推移していく中、多くのマーケット関係者は利上げに伴う「ドル高(円安)」へのポジションを持っています。それにも関わらず、6/10の黒田日銀総裁の発言は「完全に虚を突く発言」だったに違い有りません。結果、大量の売りのシステムトレードが発動したので普段はあり得ないほどの大きな値幅が動きました。この「ドル安」を受けて、昨日の米国株式(NYマーケット)は反発し、本日の日経平均株高にも繋がっています。
ドル高は米国にとって不利なのか?
よく上がる議論に「ドル高円安」は、米国の輸出企業にとって不利なのでそれを牽制したいアメリカの(陰の)圧力があるのでは?ということです。確かに米国の主要企業(特にハイテク産業)にとって米ドル高は厄介な問題です。ただ足元は原油安やドル高による輸入コスト削減から業種別に考えると必ずしもネガティブに働かないという見方がされています。
また既にドル高の影響は2014年からマーケットでは言われているので今更感も否めず、今後の企業業績にどのように反映されていくのか?その点を注意していく方が良いでしょう。
さらなる円高はあり得るのか?
今回取り上げた黒田日銀総裁の「虚を突く発言」(口先介入)は、ほんの一時的な効果しかありません。年内や中長期で見ると「ドル高」の強い方向性(モメンタム)は継続されているからです。125円ラインが意識されるようになったものの、上で書いたように125円を突破すると上へ一気に突き抜ける状況にあるので、その突破口がどのようなキッカケなのかを確認する必要がありそうです。
ただ、円高にブレる可能性を孕んでいるイベントがあります。それはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)です。言わずもがな「貿易」に係ること+政治的な要因での出来事です。
直近アメリカ(米議会上院)では、通商交渉の権限を大統領に委ねる貿易促進権限(TPA)法案が可決されました。そして下院での採決が12日に予定されているということもあり、これが通ればTPP交渉合意への大きな後押しとなります。仮にTPPが締結されると、米国は自国の経済利益を最大限得ようとするので「米国輸出産業・農業」が有利になるように(陰で)圧力が強くなることでしょう。結果、円高にブレでもおかしくないかなと思います。
個人投資家がとるべき選択は?
結局のところ、「円高」や「円安」といった目先の短期トレードに右往左往して一喜一憂しないことに尽きます。(ほとんどの日本人がそうですが)もし日本円しか保有していないのであれば、オフショアファンドや海外積立投資などで外貨保有率を高めて円安に備えれば良いだけです。要は、総資産の中で「円資産」と「外貨資産」のバランスを考え、通貨分散をすることで資産全体のリスクヘッジを行うという考え方です。
引き続き、黒田日銀や政治家要人の発言、またTPP交渉の行方、そして今後の米国指標と金利に関するニュースは要チェックでしょう。
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