インクルーシブ・ビジネス・ボンド国際金融公社（レアル建：円貨売買型）

公開日： 2014/10/21 : 最終更新日：2021/02/09 債券投資（仕組債、社債、国債、デュアルカレンシー債）

債券（国債、社債）で金利を取る運用をしている投資家へ投資に役立つ情報をお伝えしています。

今回は現在（10/21-27）、大和証券から新規募集販売されている『インクルーシブ・ビジネス・ボンド国際金融公社（レアル建：円貨売買型）』の情報です。

この債券の主な条件を確認します。

発行体（債券名）：国際金融公社　
利率　　　　　　 : 8.62%/年間
通貨　　　　　　：ブラジル・レアル（BRL）
単位　　　　　　：BRL20,000以上、BRL10,000単位：BRL=約43円（10/21）
期間　　　　　　 : 4年間
利払日　　　　　：年2回（毎年4月、10月各25日）
格付　　　　　　：Aaa（Moody’s）,AAA(S&P)
償還日　　　　　：2018/10/25

まず、この債券の大きな特徴を解説する前に、この債券自体を単純化すると「ブラジルレアル建て4年債」です。

つまり、債券（国債、社債）で金利を取る運用を考えている投資家が気をつけないといけないのはレアルの推移です。この債券は4年債ですが、ほぼ同程度の期間（5年間）のBRL/JPYの為替チャート推移を下記で確認します。

<BRL/JPY 5年為替チャート>

上下のブレ幅が大きい（ハイリスク・ハイリターン）な通貨であると再認識できると思います。

ブラジル（特に株式）の投資環境としては、現在がターニングポイントの1つです。具体的には、ブラジル大統領選挙の結果（現職ルセフ氏vs.野党ネベス氏）が左右してきます。多くの投資家は投資という観点でネベス氏を支持しているのですが、現在ではまだ支持率がお互いに拮抗している状況です。レアルへの投資については、このような政治的な側面に要注意です。

そして、この債券は「円貨売買型」というもので、下記のように通貨が異なります。

投資、途中売却：JPY
利金、償還金　：USD

これはBRL(ブラジルレアル)という通貨が、通貨規制を受けているので通常の売買が出来ないからです。日本の毎月分配型を代表するような投資信託（ファンド）で運用をしている投資家ではあれば分かりますが、レアルそのものはNDF取引（ノンデリバラブル・フォワード取引）という専門的な為替取引を用いています。

本筋から逸れましたが、投資家からすれば敢てこのようなリスクが高い通貨への債券に投資する必要があるかどうか？という観点が大切です。まして、投資信託（ファンド）などで同様の新興国通貨ファンドへ投資している場合が多いのでハイリスク・ハイリターン資産の重複には気をつけましょう。リスク（ブレ幅）を抑えた運用を心がける場合には、先進国通貨建て債券やヘッジファンド（オフショアファンド）を資産に組み入れましょう。

さて、最後にこのインクルーシブ・ビジネス・ボンドについて。

大和証券は、このようなインパクトインベストメント（投資を通じた社会貢献）を積極的にしているイメージが強いです。このような社会貢献型債券やファンドは1年のうち数回あるので個人的には注目しています。

今回のこの投資の社会貢献は「45億人の低所得者層（BOP層）」のビジネスに役立てるようです。

そして、そのビジネスというのは「インクルーシブ・ビジネス（inclusive business）」と呼ばれるものです。

インクルーシブ・ビジネス（inclusive business）とは？
・BOP層（Base of the Economic Pyramid）を消費者、生産者、流通業者、（あるいは小売業者）として位置づけ、モノの流れ（価値連鎖＝ヴァリューチェーン）に組み込んだ企業の本業の一部として成立し、かつ規模を拡大できる事業モデルとのこと。

個人的には、このような社会貢献の投資というのは大いに支持しています。
これは「カネが回れば、経済が回り、豊かになる」という側面からの考えです。ただ、一方で、投資アドバイザーの観点からは、レアルのようなハイリスク・ハイリターンな通貨での運用になるのでそのような運用を好まない場合にはお勧めしたくないなと思います。