2018年開始のOECD諸国の情報交換制度〜HSBC香港口座などの海外銀行口座を持つ日本人は要注目〜
公開日:
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最終更新日:2021/02/09
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こんにちは、K2 Investment 投資アドバイザーの眞原です。
今回は「2018年(平成30年)以降開始のOECD(経済協力開発機構)諸国の自動情報交換制度-Automatic Exchange of Financial Account Information in Tax matters-」について。
実は既にこのブログでも情報発信している内容ですが・・・、改めて。
(出典:Linkedin)
2018年開始の口座情報共有制度(CRS)って?
2014年2月にOECD(経済協力開発機構)が「共通報告基準(CRS=Common Reporting Standard)」を公表しました。そこでは、加盟各国の課税当局(日本の場合は国税庁)が、非居住者が自国内の金融機関に開設した口座の情報を互いに自動的に交換できる枠組みを決めました。
このCRS(共通報告基準)では、
各国の課税当局は
・「自国にある金融機関から、外国人などの非居住者が保有する金融口座の口座残高と利子/配当などの年間受取総額等の情報を受け取る」
・「租税条約などの情報交換規定に基づき、非居住者の居住地国の課税当局にそれらの情報を提供する」
とされています。
日本の共有報告基準(CRS)の概要
そして、日本では2018年(平成30年)からこの制度が始まり、現時点で判明しているのはこのような事です。
・金融口座情報を報告する義務を負う金融機関
銀行等の預金機関、生命保険会社等の特定保険会社、証券会社等の保管機関及び信託等の投資事業体
・報告の対象となる金融口座
普通預金口座等の預金口座、キャッシュバリュー保険契約・年金保険契約、証券口座等の保管口座及び信託受益権等の投資持分
・報告の対象となる情報
口座保有者の氏名・住所(名称・所在地)、居住地国、外国の納税者番号、口座残高、利子/配当等の年間受取総額等
<日本の制度概要>
(出典:国税庁HP)
また、これ以前に日本は下記のように多数の「富裕層対策」+「資産フライト対策」+「海外資産への課税強化」を講じてきいます。
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対象国と開始年度
既に100以上の適用国がCRSの速やかな導入をコミットしています。
そして、このうち50以上の国が2017年より導入することを明言しています。
これら「早期導入」適用国では、新規口座を開設する手順に2016年1月1日から従っています。この動きに向けて各金融機関も確認作業や事務作業に追われています。HSBC香港では中国でそれ専用の事務作業部隊を立ち上げています。
一方、中には租税条約が無い国(例:カンボジアなど)に銀行口座を開設して、そこに資産を逃がすように謳う業者や投資家の方がいます。特にカンボジアはUSDが使えるということを売り文句に資金を集めていますが、冷静に見れば正直これはリスクが高すぎます。
そもそもカンボジアの格付け(B2=投機適格級)、カンボジア国内最大銀行格付けでさえ「B」と、日本国内銀行よりも倒産リスクが高いのです(だからこそ高い預金金利が支払われるのですが)。
むしろこのような新興国(信用リスクが低い国)は、国内からの資本流出を嫌うので(中国やブラジルを見れてば分かります。この2国よりもカンボジアの方がカントリー・リスクは大きいのです)、ひとたび国内事情の変化やカントリー・リスクが高まれば資金を引き出せなくなるのは容易に想定できます。「資産保全」とは程遠い状況なのは言うまでもありません(1997年にはカンボジア内で11行が倒産)。
19世紀から永世中立国で王族や富裕層資産を保全し続けているスイスプライベートバンクのように中長期で「資産保全ができる銀行」とは全く違うのです。
さて、2018年(平成30年)には、日本もCRSを開始します。
それまでにまた様々な動きがあると思うので情報は確認しておきたいですね。
ちなみに、このCRSに唯一加わっていない大国は「アメリカ合衆国」です。
彼ら(オバマ政権)はCRSよりも前の2012年にFATCA(Foreign Account Tax Compliance)法を制定し、アメリカ人及びグリーンカード所有者は「アメリカ国外に所有する全ての金融資産をIRS(アメリカ国税庁)に報告」しなければいけなくなりました。
日本の国財財産調書制度やOECD諸国のCRSもこのFATCAに倣っています。
これを背景(呼び水)として、アメリカは「国内に抱えるオフショアエリア」に対して世界の富裕層マネーを呼び込み、今や「新たなタックスヘイブン・アメリカ」という地位を築こうとしています。
CRS適用国と適用年次について↓
<2018年から適用開始国(日本が含まれます)>
(出典:OECD HP)
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